さて、今回は中国・韓国・北朝鮮・日本の名前の呼び方に関する雑学を紹介しよう。
まずは皆さん、独特な髪型で世界を股にかけるこちらの独裁者、当然ご存知だろう。

そう、北朝鮮のキム・ジョンウン総書記である。
では次は、恐ろしいほどの野心と粛清で今や世界第2位の大国のリーダー、通称「中華製スターリン」。

そう、中華人民共和国のシュウ・キンペイ国家主席である。
そして最後に、本人も家族も日本文化の愛好者であり娘は日本の大学に留学までしていながら、声高に半日を叫んでいた韓国元大統領。

言わずもがな、ムン・ジェイン大統領である。
さて、まずはこの3人の名前を見てほしい。
日本人なら誰もが一度は耳にしたことのある名前である。
しかし、ここである違和感に気付かないだろうか。
「キム・ジョンウン」「ムン・ジェイン」は日本語には無い発音、つまり朝鮮語の読み方なのに対し、「シュウキンペイ」は習近平という漢字の日本語読みなのである。
本来なら、
となるはずである。
にもかかわらず、日本では「シュウ・キンペイ」が一般的だ。
では、なぜこのような違いが生まれたのだろうか。
朝鮮人は日本人を日本語で呼ぶ、ならば日本人も朝鮮人を朝鮮語で呼ぶ
現在では当たり前のように「キム・ジョンウン」「ムン・ジェイン」と呼んでいるが、実は昔からそうだったわけではない。
戦後しばらくの日本では、韓国初代大統領の「李承晩」と北朝鮮の初代総書記である「金日成」を、「イ・スンマン」「キム・イルソン」ではなく「りしょうばん」「きんにっせい」と読んでいたのである。
実際に、80代の高齢者と日韓の歴史の話になった時に「きんにっせい」「りしょうばん」と呼んでいたのを憶えている。
つまり、中国人と同じように朝鮮人の名前も漢字を日本語読みしていたわけだ。
しかし、時が経つにつれ南北朝鮮の指導者は、
日本人の名前を朝鮮語読みから日本語読みするようになった
ので、そのお返しというか何というか日本人も
朝鮮人の名前は漢字読みでは無く朝鮮語読みするようになった
のである。
一方、中国の政治家については事情が異なる。
日本では現在も、
- 毛沢東 → もうたくとう
- 鄧小平 → とうしょうへい
- 胡錦濤 → こきんとう
- 習近平 → しゅうきんぺい
という日本語読みが広く使われている。
中国語発音なら、
- 毛沢東 → マオ・ツォートン
- 鄧小平 → ドン・シャオピン
- 習近平 → シー・ジンピン
である。
それでも日本の新聞やテレビでは、日本語読みが主流であり続けている。
理由は「文化」と「慣習」である
よく「中国人が日本人の名前を中国語読みするから、日本人も中国人の名前を日本語読みしている」と説明されることがある。
確かにそうした側面もあるが、実際にはもっと単純な理由がある。
中国人名が日本語読みされる最大の理由は、何百年にもわたる漢字文化圏の伝統だからである。
日本人は古くから中国の人物を、
- 孔子
- 孟子
- 諸葛亮孔明
- 秦始皇帝
などすべて日本語読みで呼んできた。
現代の中国人政治家だけを突然現地発音で呼ぶと、かえって不自然になってしまうのである。
一方、韓国・北朝鮮については20世紀後半から「本人たちの発音を尊重すべきだ」という考え方が広まり、現地読みへと移行していった。
その結果、
- 韓国・北朝鮮 → 現地発音
- 中国 → 日本語読み
という現在のスタイルが定着したのである。
漢字文化圏だからこそ起きる現象
英語圏では、
- Xi Jinping
- Kim Jong-un
- Moon Jae-in
のように、基本的には現地発音に近い形で呼ばれる。
しかし日本は漢字文化圏である。
同じ漢字を見ても、日本語読みと現地読みの両方が存在する。
そのため、
「キム・ジョンウン」と「ムン・ジェイン」は現地読みなのに、
「習近平」は「シー・ジンピン」ではなく「シュウ・キンペイ」。
そんな一見すると不思議な現象が起きているのである。
毎日のニュースで何気なく耳にしている名前だが、その呼び方一つにも東アジアの歴史と文化が色濃く反映されているのである。


